NPO法人となりのかいご

隔月刊ドクターズプラザ編集部

仕事と介護を両立させることが本当の親孝行

本人のためにも、あなた自身のためにも、早めに介護のプロに相談を
川内 潤氏

NPO法人となりのかいご 代表理事 川内 潤

 

「親の介護のために仕事を辞めました」という話を聞くことが増えてきたのではないだろうか。「就業構造基本調査」(平成24年、総務省)によると、前年の1年間(平成23年10月〜平成24年9月)に前職を「介護・看護のため」に離職した人は10万1000人に上っている。
本号では、高齢者の虐待の防止や介護離職防止のための会社員向け介護セミナー等を行っている、NPO法人となりのかいご・代表理事で社会福祉士の川内潤氏に団体の取り組みと介護離職を防ぐにはどうしたら良いか等、お聞きした。

介護離職が高齢者虐待の原因に

― 「となりのかいご」の活動はどのようなものですか?
川内 高齢者虐待の防止、特に家族からの虐待の防止を目的として、支援しています。その情報発信として『介護で家族を憎まないために』という冊子(※1)を発刊、販売しています。
 また虐待防止の一環として、介護離職の防止活動もしています。実際に虐待のケースを見ると、経済的な困窮が一つの原因になっています。会社を辞め、奥さんや親を密室で介護するという状況は虐待を生む可能性があります。介護で仕事を辞めなければ、経済的な収入も途絶えることはないし、密室になることもないわけです。虐待を未然に防ぐ方法として介護離職の防止が有効なのではないかと思い、企業に出掛けて、セミナーを始めました。地域の「介護者の会」と連携をして、ストレスを抱えている人たちに集まってもらい、日々介護についてどういう思いを持っているのかを打ち明け合うグループワークも行っています。

― 企業の最初の反応はどうでしたか?
川内 事前の話では「うちには介護のことで悩んでいる社員はほとんどいないよ」と言われたのですが、実際にセミナーを行ってみると、その会社のたくさんの社員が参加して、「うちの社員ってこんなに介護に危機感を持っているのか」と驚かれました。会社側が問題を把握できておらず、社員も自分の家の介護のことを会社に相談するという発想がなかった。情報感度が高い一流企業の社員であっても、介護のことは本当に知らないのだな、と思いました。

― 介護を人に任せることに後ろめたさを感じる人もいますね。
川内 まずは、「親の介護をせず、仕事を続けたら親不孝だ」という考え方を捨てて欲しいと思います。あなたが仕事を辞めて介護に向かうことが親孝行といえるかどうかもう一度考えて頂きたい。
 セミナーでは、介護の「制度」の話をする前に、あるストーリーをお話します。私が在宅介護の現場で働いていた時、ご高齢の女性とお会いしました。その方は要介護5、寝たきりの方なのですが、突然「私、もう本当に死にたいの」と仰ったんです。「どうして」と伺ったら、「私が生きているせいで、息子と息子の嫁にかなり負担を掛けているのが分かる。仕事も辞めて、私のことをいろいろやってくれるけれど、私さえいなければこの子たちは仕事を辞めなくて済んだ。だから早くお迎えが来てくれて、子どもたちが元の生活に戻れば良い」と仰ったんです。介護離職予備群の方々にはまずこの話をして、「ここを目指したいですか? こうなりたいと思う人はきっといないと思います」と言うのです。

※1
となりのかいご発行『介護で家族を憎まないために』500円(送料別)。
注文・問い合わせはホームページから。http://www.tonarino-kaigo.org


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