NPO法人となりのかいご

隔月刊ドクターズプラザ編集部

 皆さんが日々やっている仕事を、私が急に代わることができないのと同じで、介護職の仕事も急にできるものではありません。介護職は日々おむつ交換の仕方を含め研鑽して、プロとしての技術を向上させています。それをいきなり皆さんがやるというのは無理な話です。介護する側も大変だし、される側も負担なのです。本人のためにも、そしてあなた自身のためにも、介護のプロに介護を任せるのは、とても大事なことです。
 一方で、家族の方にしかできないことがあります。もしあなたが介護のストレスに苛まれたら、誰が親御さんの気持ちを汲み取れるでしょうか。介護職の私たちにはそこまではできません。昔話をしたり、冗談を言い合ったり、ホッとできる瞬間を生み出すことができるのは家族の方だけです。最初は歯がゆいかもしれない。だけどそれが、介護される側にとっては「私は生きていて良いのだ」と思える実感につながるのです。
 こうした話をした上で、ようやく介護制度の話をするようにしています。そうしないと結局、手段があっても皆さん利用しようと思わないのです。

本当に親のためを思うのであれば、会社を辞めてはいけない

― 介護離職が年間十万人といわれますが、男女の比率に違いはありますか。
川内 介護離職する割合はまだまだ女性の方が多いです。一方で、男性が主たる介護者になる割合は少しずつ高まってきていて、最近は全体の約3割が男性です(厚生労働省、平成25年国民生活基礎調査の概況)。そして、「平成26年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)」によると、「被虐待高齢者からみた虐待者の続柄」は、「息子」が40.3%、次いで「夫」が19.6%、「娘」が17.1%、息子の配偶者(嫁)が5.2%となっています。
 同結果によると、虐待の加害者は圧倒的に男性(息子、夫)が多く、割合でいうと約6割になります。
 虐待をする人に「殴っちゃ駄目じゃないですか」と言っても、そんなことは本人も分かっているのです。でもやらずにはいられない気持ちがその人にはある。そこまでいったらもう、なかなか止められないのです。その手前で止めるには、やっぱり離職をしてはならない。「適度な距離を保つ」ということが大事なポイント になります。それ以外にも、将来に不安があり、虐待に至る方もいらっしゃいます。経済的にドンドン追い込まれていって、貯金もなくなり、介護サービス等も使えなくなって、生活が立ち行かなくなり、思い余って心中してしまうこともあります。そういうことを防ぐためにも、経済的な活動は絶対途絶えさせてはならない。セミナーでは、「本当に親のためを思うのだったら、会社を辞めちゃいけない」ということを徹底的にお話するようにしています。

― 役所の手続きで戸惑う方もいるかと思います。
川内 役所の対応が冷たいときもありますよね。たらい回しにされたあげく、書類を渡されて帰される。そのやりとりの中でキレてしまって、「もう二度と来るものか」と、制度の利用を諦めて、自分で介護を始めてしまう方もおられます。だから役所に行くときは、先に「介護保険制度の申請に来ました」というような形で言ってください。そうしたら担当の部署に間違いなく辿り着くことができます。そこでイラッとして「もういい」となったら、1割負担(※2)で使える介護保険制度が全く使えなくなって、 結果離職せざるを得なくなります。

※2
一定以上所得者の場合は2割
参考資料:「サービスにかかる利用料」(厚生労働省 http://www.kaigokensaku.jp/commentary/fee.html)


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