NPO法人となりのかいご

隔月刊ドクターズプラザ編集部

― 「親の介護のために田舎に戻った」という話も聞きます。
川内 親子が互いに遠距離で暮らしていて、親が認知症だから子どもの元に呼び寄せなければいけない、もしくは子どもである自分が戻らなきゃいけない、というわけではありません。
 実は私の祖母は認知症だったのですが、3年間、九州で一人暮らしをしていました。週6日はデイサービスに通い、デイサービスに行かない日はヘルパーさんに来てもらって、1日1回は必ず誰かが来る、という体制を作りました。また住宅改修として、火を使わないようにIHヒーターにしたり、五右衛門風呂だったのを一般の浴槽にしたりもしました。そのようにちゃんと体制を作れば、実は認知症でも一人暮らしができるのです。
 介護離職をした人たちの話を聞くと「もう自分がやるしかない」を前提でサービスを探してしまいます。介護サービスも利用限度額まで使っていないし、無料ボランティアや、おむつの宅配サービス、無料理美容券、シルバー人材センターの見守りサービスも全然使っていない。それでは手を尽くしたとはいえない。最初に「自分がやらなければいけない」と前提を立てると、できることに限界が生じます。最初から「自分でやらないためには何ができるのだろう」ということを考えてもらいたいです。

家族の介護の不安は会社や同僚と共有

― 子どもである自分の生活が崩れたら誰が親の面倒を見るのか、という話になりますね。
川内 「自分が要介護状態になった時に、自分の子どもが全てを犠牲にして介護することを望んでいるか」ということを想像して欲しいと思います。誰もそんなことは望まないのではないでしょうか。親としてはやっぱり自分の子どもにちゃんとした生活を送って成長してもらいたい。仕事と介護を両立することこそ本当の親孝行なのです。

― 同居の家族の介護が必要になった場合、情報はどのように集めたらいいのでしょうか。
川内 できるだけ早く地域包括支援センターに電話で相談してみてください。ただ、相談員は個別訪問も行っているので、センターに訪問する際は、事前に電話をした方が無駄足にならずに済みます。介護が必要と思われたら、とにかく早めに相談をすることをお勧めします。
 もし、ご家族が入院されているなら、まずは病院に配置されているソーシャルワーカーに相談することです。ただ待っていても情報が得られない可能性があります。自ら聞きに行くことが大事です。先ほどと同様で地域包括支援センターに相談に行くのも一つです。初回の相談は電話でも大丈夫です。仕事をしていて昼休みしか電話できないのであれば、昼休みに電話をする。自分の母親が北海道の病院に入院しているのであれば、その地元の地域包括支援センターに電話をしてみてください。自分一人だけで悩んでいても答えは出ないですよ。いかに早く必要な情報収集をして、介護の体制を作れるかが大事なことです。

― 最後に一言お願いします。
川内 「会社に迷惑をかけたくない」「同僚に変な気を遣わせたくない」と、ギリギリまで会社の誰にも相談しない方が非常に多いのですが、その結果、悩みを抱えて追い込まれてしまい、突然休みを取らざるを得なくなり、結果的に介護離職することになってしまったら、それこそ会社や同僚に多大な迷惑をかけることになってしまいます。
 中小企業であれば、重要な役割を担う方が介護のために突然退職したら、会社が倒産の危機にさらされてしまうことにもなりかねません。自分のためにも、会社のためにも、家族の介護の不安は、会社や同僚とある程度共有しておき、いざというときの備えをすることが非常に重要です。

性・年齢階級別にみた同居の主な介護者の構成割合


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