海外で活躍する医師たち

隔月刊ドクターズプラザ編集部

夢や誇りを持って、医療に従事できるように

ベトナムの医療の質の改善に向けて「見通しは明るい」
和田 耕治氏

和田 耕治氏

国際医療協力局
連携協力部・展開支援課

 本連載10回目の今号に登場頂いた連携協力部・展開支援課の和田耕治先生は、医療従事者の健康を守る活動に長年取り組んでいる。その研究成果や将来性が評価され、2015年度「日本医師会医学研究奨励賞」を受賞。国際協力では、ミャンマーでの感染症対策を経て、現在はベトナムの医療の質改善のプロジェクトに従事している。そんな同氏にベトナムでの支援活動について伺った。

日本のソフトパワーを活用し、医療の質を向上させる活動

― 和田先生の専門は公衆衛生と伺っています。
和田 私は福岡県の出身で、地元である北九州市の産業医科大学で学びました。国際的なレベルで仕事をしたいと思い、産業保健や公衆衛生に取り組んできました。3年前までは北里大学医学部で公衆衛生学の教員として、そして医療従事者を対象とする産業保健をテーマとして、医師や看護師の健康支援に関するプロジェクトなどで活動してきました。

― 国立国際医療研究センターでは、現在どのような仕事に携わっていますか。
和田 今はベトナムの国立病院を中心に、医療の質を高める活動を支援しています。日本には医療安全だけでなく、改善活動のノウハウもありますので、ベトナムの医師たちとディスカッションしながら、日本のさまざまなソフトパワーをアレンジして活用できるようにしています。
 例えばベトナムには、医師や看護師が学ぶための、現地語で書かれた分かりやすいテキストが少ないです。モニターや人工呼吸器の管理、心電図の読み方など、基本的な知識も十分ではないため、日本のテキストをベースに、現地語の分かりやすいテキストを作りました。
 昨年は、医療の質の改善を担当する医師を日本に招いて、改善活動の仕方や、病院での質の確保や医療安全などを学んでいただき、彼らが次にどのような課題に取り組むかを考える研修を行いました。また今年の1月には、現地でフォーラムも開催しました。これらは教育的効果が期待されると同時に、現地での医療従事者同士のネットワークを作るきっかけにもなっています。

― ベトナムの医療現場はどのような状況なのでしょうか。
和田 医療現場は医師も看護師も薬剤師も数が足りず、非常に皆さん忙しいです。政府もそれを課題と考えていて、医師などを増やす施策を考えているようです。またベトナムは9割以上が公立病院で、そこで働く人達は公務員なので、給料が低いことも課題です。これはベトナムだけでなく、近隣のカンボジア、ミャンマー、タイも同じです。医師らが生活のために副業をしなければならない状態では勉強する時間も取れませんし、モチベーションも上がらないでしょう。
 病院は都市部の大きな病院のほか、各省に省病院がありますが、患者さんは大きな病院に集中してしまっています。省病院の信頼を高めて、まず近くの省病院で診察を受けるという、医療体制を作ることも重要です。そのためにも、研修などを通じて省病院のネットワークを作り、互いに学びあったり競争しあったりすることは大事だと思います。今年開催したフォーラムは、来年も開催する予定ですし、数年後にはベトナムの保健省などに運営を引き渡して、継続してもらいたいと考えています。
 一方で、ベトナムには小さな省病院だけで対応が難しいことについては大きな病院が支援する仕組みがあります。大きな病院の医療の質が向上すれば、末端への波及効果も期待できるのです。


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