(第19回)地域医療のやりがい

横山 和之

病気が治っても退院できない理由!?

地方病院の入院パターン

 田舎の地方病院では、患者さんは病気が治っても入院を継続する事がよくあります。そこに戸惑う研修医もかなりいます。治療が終わったらすぐに退院させる方が、患者のために良いなんて田舎では通用しません。そこには急性期病院に勤務するだけでは見る事のできない、現実があります。
 当院でよくある入院パターンの一つのケースを紹介したいと思います。

■70歳代・男性
奥さんと二人暮らし。発熱と痰を主訴に救急車で来院。診察の結果、誤嚥生肺炎の診断。入院加療。発熱もなくなり、痰喀出減少、酸素化も良くなり肺炎は治癒。
 しかし、退院はできません。
 それは、食べるための機能が失われている可能性があるので食事ができるか分からないからです。 
 その後、言語療法士(ST)が嚥下評価し、リハビリを施行しました。結果、徐々に食事を取れるようになりましたが、退院はできません。
 それは、家に帰っても一人で動けるかどうか分からないからです。
 さらにST介入と同時に理学療法士(PT)、作業療法士(OT)も介入し、何とか介護士が支えて歩いてトイレに行けるようになりました。
 それでも、まだ退院はできません。
 今の日常生活動作(ADL)では、奥さんが家で看ることは不可能だからです。
 では、都会に住んでいる家族を呼んでインフォームドコンセント(IC)をして、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに入ってもらい、介護保険の申請をして入れる施設を探しますが、田舎ではすぐに入れる施設を見つけることはできません。
 それで、ずっと入院してもらうことになるのです。
 そうすると、今度は入院している間にADLが低下して認知症が進み、もともと待っていた施設に入れなくなります。再度、都会に住んでいる家族を呼んでICをして、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに入ってもらって、介護保険の区分変更を申請し直し、違う施設や病院を探します。
 しかし、すぐに施設は見つからないので、ずっと当院に入院することになります。このケースの場合は、2カ月ほどしてやっと施設の空きができ、退院となりました。
 このケースは、トラブルもなくかなり順調に運んだ入院患者さんのパターンです。多分、他の地方病院もこのような入院が一番多いパターンなのではないでしょうか。


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