ジカウイルス感染症

内藤 博敬

「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態」を考える

はじめに

 旧正月を目前に控えた2月の初め、「ジカ熱」と呼ばれる感染症に対して、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態」宣言をしました。日本では聞きなれないジカ熱ですが、緊急事態宣言となると、ちょっと怖いですよね。この「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態」とはどのような状況なのか、また、対象となっている「ジカ熱」について私たちは何に気を付けるべきなのか、ご紹介します。

「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態」とは

 「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態(PHEIC)」宣言は、対象疾患の世界的封じ込めをWHOが中心となって行う宣言のことです。PHEICが宣言されると、WHOに加盟する194カ国で対象疾患が検知された場合、24時間以内にWHOへ通告する義務が生じます。WHOは、この通告内容に応じて感染防止対策を迅速に講じます。また、強制力はありませんが、必要に応じて加盟国に対する出入国制限などの勧告を行います。
 WHOは、感染症などの疾病が国際的に伝播することを最大限防止することを目的として、1951年に国際衛生規則を制定し1969年に国際保健規則へ名称を改めました。その後、交通や流通が劇的な発展を遂げた一方で新興・再興感染症が増加し、発生地での初期対応の遅れが世界的な流行につながる危険性が年々増していったことから、この国際保健規則は2005年に大幅に改正されました。改正前は、黄熱、コレラ、ペストの3疾患を対象としていましたが、改正後は国際的に公衆衛生上の脅威となりうるあらゆる健康被害事象を対象とするよう拡大し、感染症だけでなくテロや化学物質・放射性物質などの人為的な疾病も含まれるようになりました。PHEICは、この国際保健規則に基づいて、事態の深刻さや異常さ、国際的な流行の可能性、旅行や商用での渡航によるリスクなどを勘案して事務局長が認定、宣言しています。
 2005年以降、WHOが「国際的に懸念される保健衛生上の緊急事態」宣言を出したのは、2009年の新型インフルエンザ世界流行、2014年の野生型ポリオウイルス世界流行、同じく2014年の西アフリカエボラ出血熱流行に続いて、今回のジカ熱で4例目です。


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