(第42回)川柳のユーモア

江畑 哲男

川柳的発想を活かす3

 先日、「あれっ?」と思った日本語に出くわした。NHKオンデマンドの宣伝。「お見逃しサービスがあります。皆さん、ぜひご利用下さい」などとPRしていた。

非論理的な日本語

 小生が引っかかったのは、「お見逃しサービス」なるフレーズだ。「お見逃しサービス」は論理的におかしい。明らかに変である。番組を見逃してしまった視聴者のために、その番組を提供するサービスのはず、だからだ。論理的には、真逆のことをPRしたことになる。ついでながら、サービスとは申せ有料らしい。この点も引っ掛かったが、今回は問題にしない。
 「注意一秒、怪我一生」。
 立川談志がこの交通標語を、高座で取り上げたことがあった。「注意一秒、怪我一生」とは、論理的におかしくはないか。交通事故の現実を考えれば、「不注意一秒、怪我一生」と言うべきであろう。あるいは、「注意一生、怪我一秒」の方がよほど筋が通っている、とな。ナルホドそう言われればその通り。理屈である。
 しかしながら、日常の日本語はコレでよいのだ。時に非論理的な言い回しであっても、前後関係から正しい文脈に直して日本語は判断される。善良な日本人は、そのあたりをアウンの呼吸で理解し、納得して、暮らしているのである。
 理屈を言うならば、次なるフレーズも本来的にはおかしい。
 「提灯に火を付けた」。
 (提灯に火を付けたら燃えてしまうじゃないか)
 「お湯を沸かす」。
 (お湯を沸かしたら蒸気になってしまうゾ)
 「中田がホームランを打った」。
 (ボールを打った結果がホームランになったのだ)…等々、ケチを付ければ付けられる。
 繰り返そう。日本語はコレでよい。変な理屈は言いっこナシ!!括弧内の方が筋としては通っているのだが、こんなことを言い出したら逆に変人扱いされるのがオチだ。かくして、日本語は面白い。
 さて、惜しくも入選を逃した作品から。

▽健康の維持バランスの良い食事
(一湖)
▽不摂生年末調整したい暮れ
(雪だるま)
▽物忘れ自慢話はヒョイと出る
(そら)
▽歯科治療技師の微笑み夜叉に見え
(吉野則子)
▽両膝にひと声かけて立ち上がる
(万歩計)

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